ポルシェ911をうっかり買って半年経った


買ったもの

ポルシェ 911 Type 996 カレラ4S 後期型、’04 登録のハイパフォーマンスキットを装着したもの。通常 320 ps のところ、ハイパフォーマンスキットにより 345 ps になっている。

911

  • 駆動方式: AWD
  • エンジン: 3.6L Flat6 DOHC 6MT
  • 最高出力: 345ps/6800rpm
  • 最大トルク: 37.7kgm/4750rpm
  • 全長×全幅×全高: 4435×1830×1295mm
  • ホイールベース: 2350mm
  • 車重: 1520kg

NA だが 4S の場合はターボと同じワイドボディと強化されたブレーキが使われ、足回りもリセッティングされている。AWD はマルチプレートビスカスカップリングで、5% から 最大 40% までフロントへトルクを配分する。

以前のオーナーによって手が入っているのは、GT3っぽいエアロがついてる(リアウイング固定式)のと、フロントライトが 997 ルックに変更されている。足回り、給排気はおそらくノーマル。アルミホイールは BBS の社外品、フロントとリアで違う品番のものを履いているようだ。インターミディエイトシャフトは対策品に交換済みだった。

そもそも庶民がポルシェ 911 を買えるのか問題

まず最初に強調しておきたいのは「ポルシェ 911 って割と普通に買えるよ」ということ。フェラーリやランボルギーニは正直中古を漁ろうが何しようが、庶民的な値段で買うのは無理だ。だがポルシェはワンチャンある。空冷ポルシェについては歴史的経緯で値段が高騰しつつあるが、水冷ポルシェでよければ 996 と 997 なら普通に手が届く値段の中古相場だ。そのへんの国産車を新車で買うのと、それほどハードルは変わらないレベルの価格帯で入手可能だ。ただし、GT2 や GT3 といったプレミアムモデルは例外だ。それは諦めろ。あとターボモデルは NA より高い。

996 はポルシェの最初の水冷モデルで、カエル顔からボクスターと共通の涙目ライトになったことでバッシングをうけた、曰く付きのモデルである。996 の発売は ‘97 なので、すでに 21 年前の車でありもはや旧車であるが、それにも関わらずリセールバリューはさすがにまだ高い。911 には様々な種類があるが、一番ベーシックなカレラであれば 6万km-10万km 走行の個体で 250万から400万程度で買うことができる。997 になるとさすがに平均が上がってくるので、後期型の 3.6L 996 を狙うのが今一番お買い得ではないと思われる。

整備費・維持費

よく言われるのは「整備費用がとても高い」ということだが、正直ポルシェはかなり頑丈にできている。しっかり予防整備してあげれば、バカみたいな整備費用がかかるということはあまりないのではないだろうか。ただし、エンジンオイルについてはしっかり定期的に、いいオイルを入れて上げる必要はある。

具体的に言うと、公認オイルはモービル1の 5w-40 である。4Lで4000円-5000円が相場で、オイル交換では 9L ほど使うので、自分でやっても定期的にそのくらいの金は掛かる。そのへんの国産車より維持費に金が掛かるのは間違いないので、そこは覚悟が必要だ。そうはいってもフェラーリやランボルギーニのように、なにかするたびに数十万飛んでいくようなものではない。なお、燃費は当たり前によくない。996 -> 997 -> 991 -> 992 と当然新しいほどよくなっていくが、996 のような 10数年落ちの個体ではリッター 5-8km くらいだと思っていればだいたいあっている。普通のそのへんの車よりオイル管理はシビアにやったほうがよい。空冷モデルに比べて遥かによくなってはいるが。なおセミドライサンプ方式であるため、オートバックスなどの量販店やガソリンスタンドでのオイル交換は避けたほうがいいだろう。

また、純正部品の値段はかなり高い。いいものを使っているので仕方ないといえば仕方ないが。たとえば純正のダンパーはビルシュタインだし、ブレーキはブレンボだ。そして、ポルシェセンターの整備費用も高い。もし買うのであれば、近所に実績のある整備工場があるか調べておくのをおすすめする。ポルシェ専用のテスターを備えているところを探そう。

あとタイヤとホイールが4本セットで買えない、という点も割と痛い。何故かと言うとフロントとリアでサイズが全然違うからだ。純正でフロントが 225/40ZR18、リアは 295/30ZR18 である。とくにリアタイアはこのサイズだとまぁまぁ高くつくため、割と覚悟が必要だろう。

内装

まぁまぁしょぼい。定価 1000 万超える車なら、もうすこしなんとかならんか…と思うものの、まぁ 20 年前の車だしな。さすがに最近の 992 とか内装もすごくかっこいいが、そもそも定価も倍くらいなんだよなぁ。天井のアルカンターラや、電動のレザーシートはなかなか心地が良い。

乗り心地

さすがにそのへんの車と比べるとサスペンションは硬い。後席の+2はまぁないよりマシという感じの狭さで、大人の男性が長時間乗るようなサイズ感ではない。150cmくらいの身長であれば、まぁなんとか…という感じ。3.6L NA なのでトルクは低速からかなり太く、アイドリング状態からアクセルを踏まずに2速で発進できる程度。6速まであるが結構クロスしており、6速でも 100 km 巡航だと 2000rpm くらい。ダンパーは多分経年劣化でへたっており、段差やマンホールのショックはそれなりにあるが、我慢できないような突き上げではない。

NA ならではのスムーズな吹け上がり、3.6L の余裕のあるトルク、背後から聞こえる水平対向エンジン独特のエンジン音、四駆による張り付くような直進安定性、リアエンジンによるブレーキ性能への安心感などなど、普段乗りで「ポルシェっていい車作るなぁ」という気持ちになる。

アクセルレスポンスが良すぎるため、普通の車の感覚で停止状態から発進すると、エンジンが吹けすぎてスムーズに動けない。なんならアクセル操作しないでクラッチだけで発進できるので、そのほうがクラッチに優しいかもしれない。坂道じゃなければ 3 速発進までは普通にいける。

左ハンドル

ポルシェは右ハンドル仕様もあるので、正直そっちのほうがいいと思う。左ハンドルを初めて乗ったが、やはり日本において左ハンドル車に乗ることはデメリットのほうが圧倒的に多い。まず交差点の右折が難しい。対向に右折待ちがいると、その後ろからくる直進車を視認するのがかなり困難。助手席側に体を寄せて、限界まで右側を頑張ってみる羽目になる。さらにバスの追い越しもかなり難しい。住宅街の一車線道路で、目の前のバスがバス停に停まった場合、普通に追い越そうと思うわけだが、左ハンドル車ではかなりリスクがある。なぜならバスに遮られて対向車が来ているかどうか、まったく確認できないからだ。確認できるまで右に寄ると、もうすでに相当はみ出している。取りうる手段としては、バスの後ろについたときは車間距離を相当取る、もしくはバス停では諦めて一緒に止まるしかない。

左ハンドルのメリットは、左折の巻き込みがほぼありえないことと、ものすごく狭い道路のすれ違い時に限界まで左に寄りやすいことだ。ただ当然右側は見えにくいので、左に寄ったら停止してしまって、右側が見やすいはずの対向車がうまく抜けてくれるのを待つほうが安全である。左ハンドル同士のすれ違いだったら厳しいな…w あとは左側を歩いている歩行者を認識しやすい。特に夜間。

ただし、もともと左ハンドルを想定した作られた車なので、それを右に移し替えるとちょっとした弊害が出る。これはポルシェ以外でもそうで、まずアクセルペダルやブレーキペダルの位置が、やや不自然に中央寄りの位置にきてしまうこと。そしてアクセルワイヤーが左ハンドルより長くなってしまうため、取り回しに無理があったりヘタりやすかったりすること。この二点は物理的に回避の仕様がない。

車幅が前後で違う

これは相当慣れを要する。ほとんどの車は前輪部分の車幅も後輪部分の車幅も同じである。だがポルシェの場合、リアエンジン・リア駆動である都合上、リアの方が車幅が広いのである。車幅が違うと何が起こるかというと、駐車時にまっすぐ止めるのがそもそも難しいのである。バックになるとさらに難易度が上がる。車のどの部分を基準に、どうするとまっすぐになるのかの感覚を掴むまで、かなりの慣れを要する車である。右後ろは絶望的に見えないため、進行方向向かって右側の駐車スペースにバックで停めたい場合はかなり気を使う。

車幅

まとめ

いろいろ書いたが、デメリットを相殺する楽しさがこの車にはある。「憧れの車」として分類されるような車であるし、レスポンスの良さ、質実剛健な造りなど男心をくすぐってやまない。そしていわゆるスーパーカーと言われる車にありがちな、街乗りは厳しい…ということもまったくないし、何より中古価格がそれなりにこなれている。そして他の車に比べて、リセールバリューが圧倒的に落ちにくい。さすがにフェラーリなどのように新車価格より上がるということはないが(GT3など特別なモデルを除く)、一般的な車と比較すると「圧倒的」といっていいだろう。

997 はまだちょっと高い感じがあるので、996 を選ぶのは悪くない選択肢だと思う。ただぼちぼち 997 も値段が下がり始めているので、買うなら時期は慎重に見極めるべきだろう。新しくなればなるほど MT の中古流通量は絶対的に減っていくので、MT が欲しいとなるとそこそこ根気強く探す必要があるかもしれない。なんならショップのコンプリートカーをオーダーするのも悪くないかも。996 なら絶対後期型を選ぶべき。なぜなら前期型は、ドリンクホルダーが取り外し式のものである(後期型は格納式)。また、前期型にはグローブボックスがない。さらに後期型は PSM(姿勢安定制御装置)が標準装備されている。


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