UNIXという考え方 - その設計思想と哲学


ちゃちゃっと買って、ちゃちゃっと読んだ。薄いのですぐ読めた。所謂ハウツー本ではなく、タイトルの通りUNIXの思想と哲学について書かれている。とても古く、だけど今なお新しい。一体それはなぜなのか、ということについて簡潔にまとめられている。よって、この本はUNIXを毛嫌いして使わなかった人こそが読む本なのだと感じた。

紹介されているUNIXにおける9つ基本定理(1.小さいものは美しい、2.一つのプログラムには一つのことをうまくやらせる、3.できるだけ早く試作する、4.効率より移植性を優先する、5.数値データはASCIIフラットファイルに保存する、6.ソフトウェアを梃子として使う、7.シェルスクリプトによって梃子の効果と移植性を高める、8.過度の対話的インタフェースを避ける、9.すべてのプログラムをフィルタとして設計する)は、UNIX以外のことにも応用が利く。特に1.2.8.9.あたりは、パイプ処理を使って複数の小さなコマンドを組み合わせるという、これぞUNIXという考えて方の根幹をなすものだ。これらは、最近のWebサービスについても同じなのだ。Mashupするということは、パイプを使ってフィルタすることと同じだからだ。

さて書いてあることはおおむね賛同なのだが、書籍としてはいまいちか。論旨が一定しておらず、所々で矛盾していたりする。一番の矛盾は、「動かせないデータは死んだも同然」のくだり。書籍にしてしまったらそのデータは動かせないので、この書籍は死んでいるデータの集まりである。この書籍に対してsedもawkもgrepも意味をなさないからだ。そのため、内容が古いままなのがとても残念。原著の発行が1995年頃なので、「最新のWindows NT」だとかOpenVMSだとか言われても…という気がする。欲を言えばデジタルデータで出して、ちゃんと改変し続けてほしかった。

ただ、似たような書籍はおそらく他にないし、日本語訳にも好感が持てるし、本としての体裁も読みやすいものになっているしでお勧め。こういう感じでWindowsとMacにも書籍が出ないものか…あれば読んでみたい。